たとえば、賭けごとに興じるような薄暗い場所。

たとえば、割れた窓ガラスが散らばる秘密基地。


──を想像していたわたし。


5階は多目的ホールだった。
それも、舞台つきの。


ロック調の音楽が鳴る室内。


暗幕で閉めきられていてなんとなく閉塞感があるけれど、照明がベージュのフローリングに反射して全体的に明るく、教室が4つはゆうに入りそうなほど広い。


どこから持ちこんだのかわからないテーブルやチェア、ダーツボード、音楽機材などが散乱と置いてあって。

ダーツで遊ぶ人やスマホで対戦ゲームらしきものをする人、サッカーをしてる人までいる。


ざっと見たところ30〜40の男女。

みんな、ゴールド色のネームプレートをつけている。


つまりここは、西組暴走族のアジト。


想像していたものと違ったけれど、わたしのイヤな予感は当たっていたわけだ。



ドアが開いたことで空気の変化を感じとったのか、アジトにいる人たちの視線がこっちを向いた。


「あれが西の花姫か」

「黒桜斑もいる」


好奇……ううん、反発の目。

あまり歓迎されてないみたい。