「黒刃高校にはね、4つの暴走族があるの」


学食でヘルシー丼を頬張りながら始めたハルルの話は、とてもヘルシーとはほど遠い言葉だった。


この学校のことをなにも知らない私に、ハルルが『教えてあげるよ』と言って学食に誘ってくれたのが10分前のこと。


そうして、新学期初日でガラガラの学食にやってきたわたしたち。

まさかいきなりそんなワードが出てくるとは思わなかった。


「──というより、東、西、南、北組にそれぞれいる不良たちが集まった結果、チームが4つになったってだけなんだけどね」


まぁそれでも驚きが少ないのは、暴走族がそこまで遠い存在ではないから。


暴走族からヤクザへ、っていう人生の歩みはこの町ではわりとよくある光景だったりする。


「4つのチームか……。黒刃らしいね」

「でしょ?だからもちろん、それぞれの組には総長がいて……いわゆるクラスをまとめる学級委員的な?」

「あはっ」


ハルルが『学級委員』と口にした瞬間、りらが堪えきれなかったみたいに笑いをこぼした。


「学級委員っておっかしー。みんなが憧れてる総長の座が学級委員って……ハルルの表現、りら好きだなぁ」


それは明らかな嘲笑だった。

少なくとも『みんなが憧れてる』の“みんな”にりらは含まれていない。