「理由なんかどうでもいいだろ」


対して、クリスサンから『しどーさん』と呼ばれた黒髪の彼は、あくまで冷静に……というより無感情に言葉を落とした。


クリスサンも「一理あるね」と答える。


一理あるかな?

なにが起きたのかわからないけど、理由なく因縁つけるのは果たして因縁と呼べるのでしょうか。


そろそろ戻ろうかな……。
あまり関わらないほうがいい気がする。


小さくきゃーきゃー騒ぐハルルを置いて踵を返そうとした……だけど。


「うわっ!」


人ごみに抗えず、逆に押し返されてしまった。

そのまま前のめりに体が傾く。


とっさに地面に手をついたから大きなケガをしなくて済んだものの……。


はっとしたとき、妙に視界が開けているのに気づいた。


イヤ〜な予感を頭の片隅に思い描きながら顔を上げる。