クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした


そして、ここからエンディングへと向かう。


深傷を負ったけど相手にも大きな傷を負わせた騎士は、敵から逃げのびて姫と合流する──というのが、ストーリーを知っている観客の大方の予想だと思う。


この劇ではちょっと違う。


戦いは、騎士が足を滑らせることで雌雄を決するのだ。


傷を負ってその場に倒れる兄。


騎士は、崖から落ちて川に流されてしまう。まるで死にゆくかのように。


「え……」


客席の方から戸惑いの声が聞こえてくる。


ここで舞台が暗転。セットが切りかわる。


「最後だ、行ってこい」


小松先輩に背中を押されて足を踏みだした。


これで最後……。
最後のシーンなんだ。


このシーンが終わったらこの舞台も終わる。楽しかった時間もいよいよ終わる。


初めはどうなることかと思ったけれど、実際にここまで来たらすべてが楽しい時間だった。


数年後に今を思いだしたとき、きっとこの毎日が宝物になってる。


『あのとき、こんなことがあったね』ってみんなで笑いあってる。


……そんな気がする。


だからこそ終わってほしくない。まだまだ続けていたい。


そんな寂しさを感じながら最後の時を待った。