「斑はもっと好きなように生きればいいのにな」

「好きなように……?」


おじいちゃんの言葉に首をかしげる。


好きなように生きてるように見えるけど。


というより、周りに流されず気ままにって言ったほうが正しいかな。


「苫は斑がこの家に来たときのこと覚えてるか?」

「うん。すごい、反抗的だったよね」


それこそホンモノの野犬のようだった。


なかなか心を開いてくれなくて部屋の隅で、がるる、って威嚇してた。


『俺に関わるな』が口癖だったくらいだれも寄せつけなかった。


「家出してフラフラしてたのを、メシで釣って連れてきたからな。あのときの斑は、全部がどうでもいいような目をしてた。いろいろ諦めてたんだろう。だから俺は、苫の用心棒っていう生きる目的を与えた」


「……そうだったんだ。わたしのためだけじゃなくて、斑のためでもあったんだね」

「まぁ実際に斑のためになったかはわからないが……。ただ、恩は感じてるようだけど」

「恩?」