「まだ風呂に入ってないのか?」

「おじいちゃん。……うん、界さんが帰ってくるの待ってるの。外してもらってからじゃないと、お風呂に入れないから」


手首の手錠を見せながら答えた。


夜の6時半に稽古が終わって、なんだかんだ学校を出たのが7時。


それから帰ってご飯を食べて、疲れて居間で休憩していたときおじいちゃんがやって来た。


今晩は組の仕事があるとかで、そんな日の家の中はとっても静か。


わたし、斑、おじいちゃん、ハウスキーパーさんと数人の組員しかおらず、侘しさすら漂っている。


ちなみに、斑は界さんの帰りを待てずとなりで机に伏せるようにして爆睡中。


「斑は疲れて寝てんのか?」

「うん。稽古がんばってたから」


そのときのことを思いだすだけで微笑ましくなる。


真っ先に稽古の再開を促しただけあって、稽古中、斑はずっと真剣だった。


手錠という悪条件を背負っていながらも集中力を切らさず、終わるその瞬間まで真剣に向きあっていた。


あんな斑を見たのは初めてかもしれない。