ぶんぶんと頭を振る。


イヤな考えは捨てよう。


わたしと違ってお姫さまは両想い。
この気持ちはお姫さまには似合わない。



「苫さん。ちょっといいですか?」

「はい」


台所で脚本を読んでいると、組員の(かい)さんに呼ばれた。


廊下を歩いていく界さんの後をついていく。


界さんがふすまを開けた部屋──居間には斑がいた。


「どうしたの?」

「さあ?」


あれ。たどり着いた先に斑がいたから、てっきり界さんを使って斑がわたしを呼んだのかと。


どういうことだろう?


ふり返る。


そのとき。


──カチャン。


金属がすれるような音がした。


同時に、手首に冷たいものが触れる違和感。


なにかと思って手首を見ると、なぜか手錠がかけられていた。


ドラマや映画で見るようなあれ。


子どものとき買ってもらったおもちゃのそれとは全然違う。見た目からして重みがある手錠だ。


手錠のもうひとつは斑に繋がっている。