「はぁ〜……。大丈夫かな」


後日、実際に脚本を手にしてため息が漏れる。


脚本自体はとてもおもしろい。


小説を読んだときのドキドキがしっかり生かされていて、舞台にするのがすごく楽しみ……なんだけど。



『仮面の騎士はだれもが知ってる話だ。先の展開を知る話をどうおもしろくするか。大事なのは上手な演技じゃない。観客に、いかに騎士と姫を“尊い”と思わせられるかだ。大事なのは2人の関係性。役であろうとお互い恋をすることが、演技をする上で必須条件となる』



脚本を渡されたとき、小松先輩から言われた言葉。それがずっと引っかかってる。


恋って冗談でしょ?


……ううん、あの顔は冗談じゃなかった。本気だった。


わたしはもうすでにクリアしてる。


けれど、斑は?

ウソでもわたしに恋できる?


……きっと役であってもその感情は持たないと思う。


それをわたしは、演劇祭までの期間、毎日実感させられるんだろうな。


片想いだって、毎日思い知らされるんだろうな。


それって拷問に近い気が……。