……あっ、でも。
「1つ質問があるんですけど。その……キスシーンってあるんですか?」
『ない。プロの役者でもないのにそこまでもとめるのは酷だろう』
小松先輩の答えにほっと息をつく。
みんなは「えーつまんなーい」って言ってるけど、よかった。
たとえ演技だとしても、斑以外の男子とキスするのはイヤだし……。
『ただそうすると盛りあがりに欠けるから、代わりになるような演出は考えてる』
代わりの演出?なんだろ。
キスがなければなんでもいいけど……。
いや、ハグとかだったらどうしよう!
「俺じゃ不満か?」
あわあわしていたせいか、佐紺先輩が聞いてきた。
「あ、いえ。不満とかじゃ……」
「不満」
その言葉が届いたのは、不意のできごと。
声のする方をふり返ると、壁に寄りかかって腕を組む斑が、どこか不機嫌そうな顔をこっちに向けていた。
腕を解いて、ステージに上がってくる。
「その役、俺がやる」
佐紺先輩に向かってそう言った。



