「そういえば、さっき妃崎先輩を怒らすようなこと言ってたけど、あれってわざと?」


帰る時間になって、みんながバスに乗りこんでいくのを見守っているとき、不意に思いだして斑に聞いてみた。


『腰かけ』とか『偉そう』とか『置き去り』とか。斑にしては攻撃的だったと思う。


「さっき?……あぁ、あれか。まぁキレさせたほうが本音出るから」


やっぱり。わざとだったんだ。


「一瞬、本気で怒ってるのかと思っちゃった。でもそうだった。斑は怒らないもんね」


どんなときでも冷静沈着なのが斑だ。


怒ったり泣いたり喜んだり。いろんな顔を見たいって思うけれど、そういう変わらない姿に安心を覚えるのも事実。


斑が冷静でいてくれるからこそ、わたしも落ちついていられる。



「おっ!花姫!」


ふと、名前を呼ばれた気がしてはっとする。


バスに乗りこもうとする足を止めて、“彼ら”が話しかけてきた。