「苫。戻るぞ」

「あっ、うん」


斑の手につかまって立ちあがった。


スローな足取りで歩く佐紺先輩の後ろをついていく。


おんぶされている妃崎先輩は、さっきの威勢のよさがウソみたいに静か。完全に佐紺先輩に身をゆだねている。


2人とも、わたしの敵なんだよね……。

わたしを追いだしたがっている。


2人がもし西組じゃなくてほかの組の総長と姫だったら、『いきなり現れてあっさり総長の座に着こうとする小娘』にその座を奪われることもなかった。


きっと卒業まで何事もなく平穏に過ごせただろう。


こうして関わることもなく、残りの高校生活を……。



「妃崎先輩」

「……なに?」


歩きながら妃崎先輩の背中に話しかける。


「わたしは学校をやめるつもりはありませんし、やると決めた以上、総長をやります」

「あっそ。別にいちいち言葉にしないで──」

「なので、総長の友だちじゃダメでしょうか?」


食い気味にそう問いかけると、妃崎先輩は「……は?」とこっちを見た。