「……手当て、しましょ」
わたしは、なんて声をかけていいかわからなかった。
そんなのおかしい!って咎めることも、わかります……って同情することもできなくて。
人の想いを受けとめるのは簡単じゃないって、思った。
「騒がしいと思ったら、こんなところにいたのか」
場の空気を裂くような人物が現れたのは、そんな異様な空気に包まれているときだった。
「なにしてるんだ?」と妃崎先輩を見下ろす──佐紺先輩。
「足をくじいたのよ。ちょっと手貸してちょうだい」
「そんなくつ履いてくるからだろ」
「こんな場所を遠足に選んだほうが悪いのよ」
呆れるようにため息を吐きながらも、佐紺先輩はその背中に妃崎先輩を乗せてあげた。
佐紺先輩は妃崎先輩の想いを知っていたのかな。だからあんなことを……。
──認めさせたいなら、アイツをどうにかしたほうがいい。俺やほかの連中なんかよりずっと『西組』にこだわってる。



