「妃崎せ──」

「わかってるわよッ‼︎」


ふつふつとわいた怒りが沸点に達して、爆発させる妃崎先輩。



「だから必死なんじゃない!頑張って築いてきた地位を、いきなり現れてあっさり総長の座に着こうとする小娘なんかに奪われてたまるもんですか!そうしないと、学校じゃ生きていけないのよ……っ」



最後は絞りだすような叫びだった。


なにを言っているのかわからないけれど、悲痛な想いだけは届いた。


「生きていけないって……どういう意味ですか?」


「あなたも女ならわかるでしょ。女子のヒエラルキーは残酷なのよ。カーストトップの子の好きな男子から好意を寄せられただけで女の社会から弾かれる、そういう世界なのッ」



まるで実際に体験したことがあるような言い方。


「……そういう経験があるんですか?」


「あるわよ。だれにだってあるでしょ、そういう意味わかんない理不尽な理由でハブられること。だから私は、ハブられる前にハブる側に回ったの。総長の彼女は、どんな冴えない女でも女子のトップ。総長に選ばれたってだけで特別なのよ、この地位は!」



叫び終わったあと、余計なことを言ってしまったと言わんばかりに顔を背けた。


爆発させた想いがいかに彼女の心の底から出たものなのか、りんごのように紅潮したその顔から想像できる。