だけど、くじいてるほうの足は動かすことすら無理みたいで、痛みに顔をゆがめるだけ。


「わたしのことがイヤなのはわかりますけど……立場がどうこう言ってる場合じゃないと思います」

「うるっさいわね。イヤなもんはイヤなのよ」


「おい」


突然、鋭い声がわたしたちの会話を遮った。


それは、妃崎先輩がビクッと体を震わすほどの冷えきった声だった。


──斑だ。


「行くぞ」とわたしに促す。


「え、行くって……」

「自分で立てるっつーなら放っておけばいい」


どう見ても、自分で立てる雰囲気じゃないんですが……。


「腰かけで佐紺の彼女になっただけのくせに、散々偉そうにしてたんだ。置き去りにしたって文句言われる筋合いねーよ」


なんか怒ってる……?

言葉の端々にイライラのようなものが乗っかってる気がする。


というか、腰かけ?
なんのこと?


ちらっと妃崎先輩の様子をうかがうと、ぷるぷると体を震わせていた。