そんな道を通りぬけた先、門の前でおじいちゃんが待っていた。


上品なグレーの着物に身を包み、春の陽だまりのような笑顔を見せるおじいちゃん。


この人こそ、ここにいる大人たちの長であり、黒刃(くろば)市4大勢力がひとつ、西ヶ浜組の4代目組長だ。


わたしにとってはお母さんのお父さん、つまり、お祖父ちゃんにあたる人。


「苫、頑張れよ」


おじいちゃんからの力強い応援……まるで闘いに行く人を鼓舞するみたい。

ただ学校に行くだけなのに。


でも、わたしの心構えは闘いに行くのと同じかもしれない。


これから待つわたしの新生活は決して平坦なものではないと、この場にいるだれもがわかっている。


西ヶ浜組組長の孫娘がいかに特別な存在か──。



「うん、がんばります」


不安はあるけれど、もう頑張るしかないんだ。