玄関の扉を開けると、新生活を歓迎する風が吹きあげた。

風に乗って桜が舞いおどる。


「「苫さん!いってらっしゃい!」」


扉の向こうで、この家に住む西ヶ浜組の組員たちが見送りのために待っていた。


刺青をちらつかせるいかにもな容姿の人もいれば、一見するとサラリーマンとしか思えない人もいる。


高校を出たばかりの若者、レディース上がりの女性……など、とにかくたくさんの大人たちが、玄関から門まで道を作ってくれている。



「イケすかねーヤツがいたら俺ら呼んでください。いつでも駆けつけますんで」

「あ、ありがとう……」

「ナメた野郎はぶちのめして、西ヶ浜のすごさ思い知らせてやってくださいよ」

「かしこまりました……」

「斑、頼んだぞ。ガッコーではテメェだけが頼りだ」



送りだしてくれるのは嬉しいんだけど、気恥ずかしさ半分、身の縮まる思い半分。

たぶん、世界一治安の悪い門出だと思う。