「帰ったら、結婚するって言ってたから。どう? 妹から見たら幸せそう?」
ゆめの頭は大混乱を起こした。なんで満月のこと知ってるの? あったことあるの? 満月も、地球に来たことあるの?
「あ、はい。今は子どももいて幸せそうです。昨日話しましたけど、ご主人のこと好きだって言ってました」
監視されてることを考えれば、当たり障りなくかわすこともできた。
零がまったくの誤解をしているとも思えるし、または本当に満月のことを心配しているようにも思える。
いちかばちかだったが、本当のことを言ってみるほうに賭けた。
「そっかー!! よかった!!」
零が白い歯を見せてニカっと笑う。思わずドキッとするくらいまぶしかった。
よくわからないけど、これでよかった、そう思った。「ごめんね、本当はそれが聞きたかっただけなんだ。胸のつっかえが取れたよ。そうだ、あとで俺の彼女紹介するね。あっちから見てるでしょきっと」
これは完全な黒だ。ゆめが月からきたことを零は知っているのだろう。でもなぜ? 疑問が浮かんでは消えていく。
二人で駅まで歩いていく途中でタクシーがすっと近寄ってきて止まる。
不思議に思ってふたりで運転席を覗くと、朔が恐ろしいほどの笑顔でこちらを見ていた。
「さ……朔!?」
「お嬢様、零さん、とりあえず乗ってください。」
「誰?」
零がとぼけて言うが、もう後のまつり。
「ここでは人が多すぎます。早く乗ってください。私も寿司食べに行きたいので」
寿司食べたいだけなんじゃないかな。そう思いながらタクシーに乗り込んだ。
「お久しぶりですね、零さま」
「いいの? 条件」
「はい。先ほど確認しましたが、大王様から許可がおりました。特別枠だそうです。あと詩穂さんも。満月お嬢様はお元気ですので、ご心配なく」
やっぱり。ゆめは、満月がなぜ地球に行ったことを秘密にしていたのだろうと思いを巡らせる。
「詩穂もいいんですか!?」
零の目がキラキラと輝く。詩穂という人も知り合いなのだろうか。
「ああ、ゆめちゃんごめんね。詩穂は僕の彼女なんだけど、はなとも一緒によく遊んだんだよ」
はな? 首を傾げているとハッとして、朔をみた零。朔は大丈夫ですと前を見たまま告げた。
「君のお姉さん、満月の地球での名前だよ。ゆめも地球で呼ぶ名前だろ? 同じこと考えるなんてさすが姉妹だね」
あまりのことに開いた口が塞がらない。ぱくぱくと口だけが動く。そのうち急に胸の翡翠が熱くなりる。いつもより熱いので思わず取り出すと、ぼやんと頭の中に響く。
