君が月に帰るまで



夜更けに始めた消える練習は、明け方まで続けた。「ゆめ、おはよう。起きてる?」

はじめの声がして、はっと飛び起きた。
いつの間にか寝てしまったんだ。

「ああ、うん。いま出るね」

簡単に身支度をしてリビングへ行くと、はじめはテレビを見ているところだった。

「ごめんね、遅くなって」

「いいよ、公園少し行かない? 歩きながら話そうよ」

「いいね、行きたい」

二人で公園を歩く。朝の6時半。もう日が昇ってきているが、緑が茂っていて、木陰に入れば涼しさを感じる。

「月の世界ってさ、自由ないの?」

はじめが口を開く。

「そうだね、ないかな」

「好きな人も自分で選べない?」

「私は大王の次女だしね。よけいそうかな。でもそれも運命なら受け入れるしかないかな」

「それで納得できる?」

「納得するしかないんだろうね。逃げて平民になる選択肢もないわけじゃないんだけど。それかもう一回罪を犯して死罪にしてもらうか、投獄された方が楽なのかも」

あははっと乾いた笑いをすれば、はじめの顔がみるみる曇る。

「ねぇ、ゆめ。本当は何しに地球に来たの? もう一回罪を犯すってことは、一回は悪いことをしたってこと?」

思わず口を手で覆ったがもう遅い。はじめの視線を痛いほど感じる。ゆめは自分の足元に落とした目を、あげることができなかった。

「ねぇ、ゆ……」

「おーい!! はじめ! こんなとこでなにしてんだ?」

昨日も聞いた元気でおちゃらけた声。
はじめの兄の零が、向こうから手を振って歩いてきていた。「零! 朝早いね、どうして?」

はじめがびっくりして声をかけた。なんでこんな早い時間にいるんだろう。