「夏樹に聞いたよ、ゆめ月に帰ったら結婚するの?」
ややあって、ゆめはコクンとうなづく。質問形式なら話せるなとはじめは思った。
「それって、ゆめがしたくてするの?」
ふるふるっと首を横に振る。
何度か質問すれば、結婚はしたくてするのではない。好きでもない人と結婚する。家が決めることだから逃げられないというところまではわかった。
「そっか……。どうしてもそうするしかないんだね」
はじめは、ゆめのどうしようもない悲しさが伝わってくるようで肩を落とした。
夕食を食べ終え、自室へそれぞれ戻る。モヤモヤっとした気持ちを抱えつつ参考書を開いた。
***
日を跨いで1時13分。私は体がほんのり温かくなったのを感じて目を開けた。
ウサギから人間に戻ったあとは、相変わらずの裸。タオルケットで体を隠しながら、はじめの母親のタンスを目指す。
はじめの母親は、なかなかの衣装もちで洋服も着物も選びきれないほどたくさんあった。
若草色の浴衣を選び、一息つく。キッチンでお茶を飲んでいると、胸の翡翠が熱くなる。テーブルにつくと満月の声が頭に流れてくる。
『月夜、どうあれから』
満月と話すのは2日ぶり。図書館のことや、きょうのこと。出来事が山ほどあったような気がする。
『うん、いろいろあった』
『なんとなくは地球鏡でみたけど。あなただけじゃなくて、みんなも少しずつ成長してるみたいね』
『地球人も、人を好きになる気持ちは同じなんだなって思ったよ』
『そうね、お友だちもできたみたいでよかったじゃない』
『なんか帰るのが辛い。ねえ帰ったらどうしても結婚しなきゃダメなの?』
『そうね。はじめさんが望んでくれれば状況は変わると思うけど』
