君が月に帰るまで


「いやいや、まだきっとオンライン英会話の授業中だから!! また明日ならいいかな。明日はどう?」

「なんだ、そうなの。明日か。彼女次第かな。なんせ久しぶりだから、寝かせてくれないかもしれないし」

寝かせてくれない? 寝ずに積もる話でもするのだろうか。はじめは妙に嬉しそうな零を、玄関で見送った。

はじめはゆめの部屋へ向かう。
「ゆめ、ただいま。ご飯食べる?」

返事がないのでそっと襖を開ける。
縁側に続く窓が空いている。外に出たのだろうか。
はじめもサンダルを履いて、庭に降りる。
「ゆめー? どこ?」

広い庭を見渡すがどこにもいない。
イングリッシュガーデンの方にいってみる。薔薇のアーチの下に座っているウサギのゆめを見つけて、そっとしゃがみこんで声をかける。

「ゆめ? どうかした?」

ゆめはビクッとして振り返ると、鼻をヒクヒクさせてバッとはじめの胸にとびこんだ。「ちょっと、やめてよ。くすぐったいよ」

しばらくじゃれていたが、はじめはゆめを抱えて家へと戻る。

「お腹すいたよね? ご飯食べよう!」

ウサギになってしまうと、しゃべれないのが悲しい。

「ゆめ、ウサギのままでしゃべる方法ないかな」

ゆめは悲しそうに首を振る。やっぱりないよね、そんな方法。

「月の出は明日の1時13分。ちょっと遅いね……。よかったら、朝散歩いかない? ゆめに聞きたいことがあるんだ」

ゆめは首を傾げる。わざわざ聞きたいことがあるなんて言ったら、どきっとするよね。