君が月に帰るまで



「ただいまっ!!」

リビングから、笑い声がする。あわててリビングのドアをドカンと開けると、向田と零がダイニングテーブルでお茶を飲んでいるところだった。

「ビックリした、なんだよそんなにあわてて。お兄たまに会いたかった?」
「ぼっちゃま、おかえりなさい」

さらさらとした長めの黒髪、切れ長の瞳。茶化した口調。久しぶりに見る兄は何ひとつ変わっていないようだった。

「あ……、ただいま。向田さん、ゆめは……?」
「お嬢さまですか? また英会話の授業だってお部屋にこもっていらっしゃいますよ」
「坂井のお嬢さまなんて、久しぶりに会ったよ。子どもの時以来かな」

きっと向田が紹介してくれたのだろう。
ウサギになるのは見てない様子で安心したが、はじめの友だちとして紹介する作戦は失敗。次の手を考える必要がある。

まあ親戚だと信じてくれたのならそれでもいいかと思いながら、零の隣にはじめも座った。