君が月に帰るまで

「ゆめ……!?」

ニコニコ笑って誰かと話している。隣に座った三白眼のイケメン。夏樹だった。

え? なんで? 思わず足が止まる。ゆめと夏樹は知り合いだったんだろうか。塾だってまだ1日しか行ってないし、面と向かって紹介した覚えもない。

はじめの心がズシンと重たくなる。なんで夏樹がゆめと話してるんだ。だいたい話すようなことある? 僕だってそんなにまだ話してないのに。

声は聞こえないが、楽しそうな雰囲気が伝わってはじめはイライラした。夏樹が時計に目を落とし、何か声をかけて2人で立ち上がる。

そのひょうしにゆめがつまづいた。夏樹はおもわずゆめを抱きとめて、顔を覗き込む。ゆめもニコッと笑って姿勢をなおすと、ふたりでこっちに歩いてきた。

心臓が痛いくらいにドキドキする。なんだこれ。考えるより先に体が動いて、はじめはふたりの前に仁王立ちで立ち塞がった。「あ、はじめ! ごめん待った?」

ニコニコ笑いながらこっちにかけてくるゆめ。

「ううん、今来たとこ」

「夏樹と話してたんだ。そこでたまたま会ってね。夏樹は動物のお医者さんになりたいんだって、すごいよね」

ニコニコしながらそう話すゆめの顔が、とても嬉しそうで心臓がギュッとなった。夏樹……もう呼び捨てなんだ。

「そう……よかったね」

そう絞り出すのがやっとだった。

「ちょうど昼飯行こうと思ったら、そこで会ったんだ。喉乾いたって言うから、自販機に案内がてら、ちょっと話してた」

夏樹の言葉が耳の中に残る。どっちから話しかけたの? 話してたのってそれだけ? さっきは抱きとめてたじゃん?

どんどん湧き上がる感情に頭がついていかない。

「あれ、青山くんも来てたんだ」

後ろからかえでの声がして振り返る。

「ああ、かえでも来てたんだな」

何となく気まずい雰囲気が流れる。ゆめは困ったような顔で三人の顔を交互に見つめた。

「えっと……せっかくだし、みんなでごはん行く?」

ゆめが雰囲気の悪さをみかねてか、口を開く。