「曽祖母さまのときは小判だったけど、現代アレンジ」

はぁ……。はじめも使っていいと言われたけど使えるか! こんな大金。

二週間の短期集中講座に申し込むには十分な金額だ。すごいな月の宮殿の財力はとはじめは感心した。「でも、11時23分には月が沈むから、ウサギに戻るんだろう?それからどうするの? 僕は夕方まで塾あるし……」

「大丈夫、ウサギになる前に帰るから」

はぁ? あっけらかんと言うゆめに、はじめは呆れた。見られたら即終了なんだろ? もうちょっと慎重にしてもいいのでは?

「ねぇ、ゆめ。バレたらどうするの? もうちょっと慎重に……」

話の途中で、ゆめは手を出して制した。

「私がそうしたいの。絶対見つからないようにする! はじめの願い、叶えてあげたいし……」

ゆめは目を床に落とした。そうか、せっかくの地球見学だ。家にいたところで、地球見学にはならないんだろう。積極的なんだな、ゆめは。

はじめは自分のことも考えてくれているのが、素直に嬉しかった。

「ゆめがそうしたいならいいよ。……、確かに願いを叶えてもらえればうれしい。でもせっかく地球見学に来たんだし、ゆめには二週間楽しんでほしい」

そう微笑みかけると、ゆめは耳まで真っ赤になった。どうした?

「……わかった」

「向田さんにうまく言い訳しないといけないね」

はじめは立ち上がりながらそう言うと、おやすみと声をかけて2階へ上がった。