自販機の前で何を買うか決めたはいいが、ボタンが1番高い列にあり、背伸びしても届かない。


「う~、こんなところで身長が低いことのデメリットが出るなんて...」


別のやつにしようかなと、諦めかけた時...


「君、これが欲しいの?」


私の後ろから先輩が声をかけてきた。


「え、あ、はい、そう...です。」


「ふはっ、そんなかたくならないでいいよ。これね、はい。」


先輩は私が驚いて挙動不審になったのが面白かったのか、笑いながら、さっきまで私が格闘していたボタンを押してくれた。


「あ、ありがとうございます。」


「んーん、全然大丈夫。そういえば君、中学1年生だよね?名前はなんていうの?」


「あ、えと、中学1年4組の白鳥楓織です。」


「ふーん、俺は右京龍弥《うきょうりゅうや》、中学3年6組サッカー部。4組ってことは如月とか夏方とかと一緒?」


「あ、友達です。」


へぇ~、サッカー部なんだ。確かにユニフォーム着てるしスパイク履いてるな。


「友達、ねぇ。そうだ、楓織ちゃん、来週の日曜にうちの学校で練習試合やるんだけど、もしよかったら見に来ない?」


「練習試合、ですか。興味はあるので、予定が空いてたら行きたいですね。」


サッカー部の練習試合かぁ。行ってみたいなぁ。


「そっか、それじゃあ楽しみにしてるよ。あ、如月にもよろしくいっといてな~。」


「あ、は~い。」


私が返事を返したころには、もうすでに先輩の姿はなかった。


さすがサッカー部。足が速い。


ふぅ、なんか疲れたなぁ。さっきの動画の続きでも観ようかなぁ。


なんて考えながら教室に戻っていた私はこれっぽっちも考えなかった。


さっきの右京先輩が、私を狙ってくるだなんて...