私が機嫌を損ねて碧依くんと帰ってる時、碧依くんがコンビニに寄ると言って私1人でコンビニの駐車場で待っていた。


その時だった。


「お、ずいぶん可愛い子いんじゃん。今日当ったり〜。」


「ねぇねぇそこの君、今から俺らと遊ばない?」


いかにも不良!って見た目の男性2人組がそう声をかけてきた。


「わ、私、ですか?私、そんなに可愛くないですよ?あと、今人を待っているんです。」


「無自覚ちゃんか〜。いいね、俺好きだよ。」


「それに待ってる人だっていないじゃん。ちょっとくらい遅れたって言い訳すればいいでしょ。」


「そうそう、ほんとに少しだけでいいからさ〜。」


この人たち、怖い。


早く助けて。


ーーーーー碧依くんーーーーー


「おい、お前ら俺の彼女になんか用?」


あ、碧依くんだ。よかった。


凄く安心した。それと同時に『助けてほしい』と思った時に真っ先に脳内に碧依くんの顔が浮かび上がったことに、困惑した。


そ、それに、今碧依くん『彼女』って。


で、でもこれはあれだよね。この不良男性2人組を追い払うための嘘だよね。知ってるよ私、だって少女漫画でこういうのあるもん。男の子が女の子をナンパから助ける時にわざと彼氏のフリをしたりするの。


「ちぇっ、彼氏持ちかよ。せっかく可愛い子見つけたと思ったのによ。」


「いいから、早くどっか行け。」


「はいはい、諦めますよ。」


凄い。


碧依くんが来てから1分も経ってないのに、あの人たちが立ち去っていった。碧依くん効果、恐るべし。


「楓織、大丈夫?」


そう碧依くんが言ってくれた時に、私は堰を切ったように泣き出した。自分でも結構怖かったんだなと実感する。


「あ、碧依、くん。こ、怖かった、よ。」


「ごめんな、もっと早く気づいてあげられなくて。」


そう言った次の瞬間、私は碧依くんの匂いに包まれた。


碧依くんに抱きしめられたのだ。


びっくりし過ぎて、涙が引っ込んでしまった。


「⁉︎ちょ、ちょっと、碧依くん?あのー、何をしているのでしょうか?」


頭ではわかっていても、口から出るのはその言葉。信じきれていないのだ。


「ん?楓織を抱き締めてるだけ。こうしたら安心すると思って。」


いや、『だけ』ってだけって何よ。まぁ、安心はしてるから効果はあるけど…さ、流石にこれは…


今まで、男の子とこんなに近い距離で密着したことがなかったから、慣れてなくて心臓がバクバクいってる。


さっきまで震えてた手と足は治ったけど、今度は心臓がやられてます、碧依くん。


何とか別の話題に変えようと私は、碧依くんがコンビニに寄った目的を聞いてみた。


「あ、そ、そう。ね、あのさ、さっきは何しに行ってたの?」


すると、碧依くんは何やら袋を掲げて、


「あー、忘れてたわ。はい、抹茶タルト。これで機嫌直して。」


中に入っている抹茶タルトをくれた。


こ、これは、今月出たコンビニの新作スイーツではないか。


食べ物でも特に甘い物には目がない私は、直ぐに機嫌を直した。


まぁ、家に帰って寝る前だと自分って単純だなぁと思っている。


でも、あの時助けてくれてからは、碧依くんは私の中で大切な存在になっていた。