「今日は、ありがとうございました」
「こちらこそありがとう。
…寒いから、もう家入りな」
「はい」
そう言って、
先生に背を向けて歩き出した時だった。
「…雪?」
今年、はじめての雪だった。
先生と見たい。
そう思った時には、
先生の方に向かって走っていた。
「先生!
雪…です…。…え…?」
「…いお…ごめん…。
本当ごめん」
先生はそう言うと、車を走らせた。
泣きながら、謝っていた。
あんなにも涙を流す先生は、はじめて見た。
どうしてか分からないけど、このまま、先生を一人にしてはいけない気がした。
「待って!先生!」
そう叫んでも、
先生は車を止めることはなかった。
先生の車が見えなくなった後も、
雪が降る中、私は一人立っていた。
こんなにも綺麗な雪が降ってるのに、私の心は、外の冷たい風に包み込まれているように冷たかった。
「綺麗…」
どんなに心が冷たくても、
綺麗だと思ってしまう。
綺麗だから…
…先生と見たかった。
昔から大好きな雪を
大好きな人と、
笑顔で見たかった。
雪が、降り止まないのと同じように、
私の目から、幾度となく涙が溢れていた。
どうして、泣いているかなんて
わからないけど、
もう会えなくなるかもしれない。
急に、そんな不安が押し寄せてきて、
涙が止まることはなかった。
