「先生…
私は、これで良かったんでしょうか?」
「…全部伝えれた?」
「はい。
…今の気持ち、全部ぶつけてきました」
「ならいいんじゃない。
…伝えられないのが
一番…辛いから」
それ以上、先生は
何も言わなかったし、聞かなかった。
私も先生が言ったことに、
なんて返せばいいかわからなかった。
また、いつもの辛そうな表情をしたから。
先生は、ずっと何かを一人で抱えている。
私は、先生が何に苦しんでいるのか、
どうしても知りたかった。
でも、私には聞けない。
先生は教師で、私は生徒だから。
先生にそう言われてから、
触れられなくなった。
今聞いても、先生はきっと心を閉ざす。
どんなに近づけたと思っても、
先生から遠ざかって行く。
だったら、余計なことは聞かず、
今のままでいたい。
そう思うのは、
わがままだろうか。
その時の私には、何も分からなかった。
先生の苦しみは、
ちょっとしたことじゃなかったってことを。
日に日に大きくなる
先生の苦しみや辛さに、
全く気づいていなかった。
私が、
先生を苦しめていたことも。