超能力者でも魔法使いでも占い師でもないのだが、ごく平凡な私には妙に胡散臭い特技がある。



「春呼さま、ありがとう〜! 絶対むりだと思っていたけど春ちゃんにお願いしたら付き合えたよ〜」

「よかったねー」

「やっぱり恋愛には春呼頼みがいちばんだね! 神さま仏さま春呼さま!」


 吉木春呼(よしきはるこ)、十七歳。
 苦手なものは球技全般、人並みにできるものが大半、得意なのは他人の恋愛を成就させることだ。


 

 始まりはなんとなく恋愛相談を聞き流すという、ありきたりな女子高生の日常であった。

 もともと私は自分がお喋りするよりも友人の話を聞くことが多かったのでふんふんと相槌を打っていた。
 すると、摩訶不思議なことが起こり出した。私に相談してきた友人たちが次から次へと恋を実らせていくではないか。

 そんな『春を呼ぶ恋愛神・吉木春呼』の噂はたちまち学校中に信頼と実績をもってして駆け巡り、恋に迷える信者たちが頻繁に訪れるようになった。

 しかも今のところ、十中八九が恋愛を成功させているらしい。
 たまに失敗することもあるけれど、そういう子も次の恋では成功させているらしい。らしいらしいで申し訳ないが。


 そういった結果を聞きながら、冷静な私は考える。
 
 あのね、それはそうだよ。
 私は何をせずとも勝手に告白の勇気への後押しになっているだけだ。
 そもそも私のところに来る子たちはある程度の確証を持ってきているので、成功率が高いのは当然のことである。

 とはいえ私の雑な相槌によって幸せになる子がいるならそれでいいし、私も自販機のジュースやらお菓子やらを献上されるのだからWin-Winな関係を築くことができている。

 たまにやってくるうまくいかなかった子に関しては「そっか、次の相談は何も持ってこなくていいよ。また何かあったら気軽においで」と言ってあるので必ず次も来てくれるし、次、あるいはその次といずれは成功する。

 そして成功体験が積み重なり、胡散臭い恋愛神に信頼と実績に箔がつくという簡単な仕組みである。