「社長、申し訳ありません、今日は予定があって、お食事にお付き合いすることが出来ません、本当に申し訳ありません」

「いや、そんなに謝らなくても、予定があるなら仕方ないさ、恋人と久しぶりのデートか」

俺はないだろうと思いながら、さらっと口にしたことに、まどかは頬を赤らめて頷いた。

マジかよ、そうだよな、俺とは社長と秘書の関係だ、恋人と過ごす時間があって当たり前だよな。

帰したくない、まどかと恋人との夜を想像しただけで、俺はすぐにでもまどかを連れ去りたい衝動に駆られた。

お前を諦めきれない俺はどうしたらいいんだ。

「社長、どうかなさいましたか」

「いや、なんでもない」

そう、この日は雨が降っていた。

どうしても真っ直ぐ帰る気持ちになれなかった。

今頃、あの笑顔を恋人に向けているのか。

あの潤った唇でキスをしているのか。

恋人に抱かれて、感じているのか。

どうして俺じゃないんだ。

まどか、まどか。

その時だ、雨の中、ずぶ濡れになったまどかを見つけたのは……