その時、龍斗はまどかを引き寄せ抱きしめた。

「社長?」

「具合が悪いのに、まどかを放っておく奴の気がしれない」

「社長は優しいんですね」

「今ごろ気づいたのか、遅えよ」

「本当ですね、遅いですね」

「いや、遅くねえ、俺のマンションにこい、こんなところに一人でいたら、余計に具合が悪くなる」

社長はまどかの答えを聞く前に、まどかを抱き上げて、車に運んだ。

身の周りの荷物だけ車に積んで、走り出した。

まどかは龍斗に攫ってもらいたかったのかもしれない。

全く抵抗もせず、ただただ嬉しくて、今、龍斗の運転する横顔をじっと見つめていた。

マンションにつくとすぐにベッドに横になるように促された。

「まどか、熱測れ」

「はい」

「薬飲んどけよ」

そう言って龍斗は薬をまどかに手渡した。

まどかは妊娠検査薬で陽性だったので、薬は飲みたくなかった。

「あのう、社長、薬は飲みたくありません」

「何子供みたいなこと言ってるんだ、わがまま言わずにさっさと飲め」