「思ったよりも、戦っている人が多いです」
「――――自分で守ろうともしない者に、用はないですから」
「……これも、レナルド様が?」
「騎士団長とは、同期です。王族に従うことを望まない人間は多い。聖女様を旗印にすれば、あっという間に半数が離反しました」

 たしかに、私の扱いはひどかった。
 それでも、聖女として最前線に立ち、慈善事業に力を入れる中で、貴族や騎士たちの中にも、真っすぐに前を向き、人のために戦う心を持つ人たちがいることを知った。

 だから、私は戦い続けることを選んだの。

「――――とりあえず、王都全体に結界を張ります」
「無理はなさらずに」
「いいえ……。なぜか、力がみなぎっているの。できる」

 桃色の光が、今はもう王族のいない王都全体を包み込んだ。
 私は、すでに王族が王都の外に出ていることなど知る由もない。
 ただ、出会った人たちの笑顔を守りたい。
 そして、レナルド様と、その場所でほほ笑んで……。

 そこで浮かぶのは、幸せそうに笑うレナルド様。
 なぜ、レナルド様が自分のことを許せないのか、まだ聞いていないけれど……。

 どうか、幸せになって。

 桃色の魔力が、王都に降り注ぐ。
 そこに魔獣が侵入することはできない。
 空に浮かぶのは、聖女の魔法陣。

「うわぁ。ずいぶん大きいわ」
「さすがです。――――聖女様」

 私のことを褒めながら、あっという間に魔獣を倒していくレナルド様。
 シストは、『あと150匹』とつぶやいていた。
 この調子なら、すぐにその数に到達するだろう。

「――――シスト、ナオさん」
「聖女様? 俺の前で、ほかの男の名を呼んではいけません」
「心……狭いです」

 シストは聖獣様だ。男性ではない。
 あれ? でも、初代聖女を愛しているみたいな言い方をしていたような?
 聖獣様と初代聖女様の恋物語? ときめく。

「俺の心の機微全ては、聖女様限定ですから」

 ラベンダー色の瞳が細められ、私のことを見つめた。
 レナルド様の動きも、どんどん良くなっているみたいだ。
 シストが言っていた言葉や、守護騎士をやめてしまったことと関係があるのだろうか。

 ほどなく合流を果たした、赤い髪と瞳のロイド様と、紫の髪をいつになく振り乱した、服が破れ、いつも以上になぜか色っぽいミルさんと合流を果たすのは、この直ぐ後のことなのだった。