「う……」
夢を見ていた。仲間たちが、泥沼ともいえる戦いに足を踏み入れる夢。
起き上がろうとすると、背中に手が添えられる。
まるで、ジェットコースターに、何十回も連続して乗せられた後のように、気分が悪い。
「――――目が覚めましたか。聖女様」
「レナルド様……。私」
その瞬間、どうして自分が王都に戻ってきているのかに思い当たり、総毛立つ。
「王都は、魔獣は? ミルさんと、ロイド様と、ビアエルさんが無茶してる!」
「……まだ、城門は破られていません。大丈夫ですから」
私は、あまりレナルド様の『大丈夫ですから』については、信用していない。
何とか立ち上がる。度重なる転移魔法に、負担がかかっていたのだろう。
少しの間気を失っていたようだ。
「無理をなさらず……。視察してきましょう」
「それ、帰って来ないフラグです。絶対に一緒に行きます」
「――――ふ。信じていただきたいのですが。俺は強いですよ」
「だから、そういうセリフ言ったらだめです!」
本当に、レナルド様は、フラグを乱立するのがお好きなようだ。
まとめて回収されたら、どうするつもりなのだろう。
「……行きましょう」
「ええ、北門のほうが魔獣が少ないようです。ビアエルが集めた冒険者たちが、戦い始めているようです。俺たちは、正門のロイドに合流しましょう」
「わかったわ」
私の手を、強く握りしめるレナルド様。
それだけで、力が湧いて、頑張れる気がしてくる。
ちらりと見上げれば、こんな事態なのにレナルド様が、私に微笑みかけてくれる。
場違いにも、心臓がドキリと音を立てた。


