中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。


 ふんわりと、宙に浮かんだ、紫の髪の毛と、金の瞳をした女性。
 普段彼女の姿は、どこか悪役のように見えた。
 だが、豊かな髪の毛を一つにくくり、うすい化粧、魔術師でも最高位を表すローブを纏った今日の姿は、むしろ清廉ささえ感じるものだった。

「ビアエルは、ちゃんと避難指示だしているかしら」

 ぽつりとつぶやいた言葉。
 王都を守ると決めたが、騎士団の力を借りることも叶わず、聖女と守護騎士は、辺境へ行ってしまっている今、ミルとロイドの二人が主戦力となる。

「――――王都の外に逃げても、地獄だわ」

 すでに、王都は360度取り囲まれようとしていた。
 幸い、城壁は高く頑丈だ。
 そうやすやすと破られることはないだろう。

 ロイドは、正門を守り、ビアエルは避難指示を酒場でなじみになったという、冒険者に伝えてくるという。
 意外に、ビアエルは顔が広いようだ。

 それに比べると、家を飛び出し魔術師になったミルは、知り合いがそれほどいない。
 もちろん、不老や美容の研究でビジネスライクな関係を保っている貴族はたくさんいるけれど。

「私の役目は、空からの侵入を許さないことになりそうね」

 地上の魔獣は心配だが、剣聖の称号を持つロイドが、すぐに後れを取るとも思えない。
 おそらく、ビアエルも、自分の身を守りながら、数多くの武功をあげるに違いない。

「別に……美容と不老に魔力を使っているから、魔法を使わなかったわけじゃないの」