でも、私だって、好きでこの世界に来たわけじゃない。
戦いだって、したことない。
旅に出て戦うなんて、怖いよ。
「――――その顔」
「え?」
「この世界に呼ばれた時にも、不安そうなその表情をしていましたよね。……聖女様が戦いの場に立つ必要はありません。そのための守護騎士です。どうか、代わりに戦うように命じてください」
騎士様というのは、そういう生き物なのだろうか。
不安そうな淑女を、放っておいたりしないのだろう。
まあ、いくら毎日礼儀作法や聖女としての立ち居振る舞いを学び続けているからって、淑女にはまだ到底及ばないのだろうけれど。
それでも、私はレナルド様に笑いかけた。
心配かけたくないし、いつも陰に日向に守っていてくれていることを知っているから。
そして、なけなしの勇気を振り絞って、「私も戦います」と返事をする。
その言葉を告げた途端、心底驚いたとでもいうように、レナルド様は、そのラベンダー色の瞳を彩る髪の毛と同じ淡い水色のまつ毛を瞬いた。


