『とりあえず、好きだと伝えてきたら?』
「シストは、これからどうするの?」
『もちろん、僕は君と一緒だ』

 なぜか、むしろ力は、聖女ではなくなる前より、強くなっている。
 私の体は、もう一回粒子になって、レナルド様の元に、赤いリボンに引き寄せられるように移動する。

 荒野の熱い土の上に、足の裏がつく感触が、一番初めに感じられる。それから、体が再構成されていく。

 音と匂い、そして最後にレナルド様の背中が見えてくる。

「……聖女様、どうしてですか」

 背中を向けたままの、レナルド様が、手の色が白く変わるほど強く愛剣を握りしめる。

 桃色の魔力が、私たちの周囲をグルグルと取り巻きながら、渦巻きみたいに広がっていく。取り囲まれる、魔獣はこの中にしばらく入ってこれない。

 折り重なるような魔獣の屍と、血の匂い。
 白い正装を赤く染めるのは、魔獣の血? それともレナルド様の?

 こちらを向いてくれない、俯いたままのレナルド様。その正面へと回り込む。

「レナルド様は、私と私の名前、どちらを選ぶんですか」

 ラベンダー色の瞳が見開く。私の大好きな色だ。初め、この世界に来た時、あまりに綺麗なその色を、不躾だと思いながら、何度も盗み見た。

「聖女様……」

 そんな顔、しないで。
 レナルド様には、笑っていてほしい。
 だから、一人にはしない。