シストの言葉に、はっと我に返る。
 そう、シストは、場所が分かれば、転移ができるはず。

『理沙、あとちょっとで、魔力が貯まるけど、どうする?』
「連れて行って、レナルド様のいる場所に!」
『それが、理沙の選択なの……。彼女たちと同じ道を選ぶんだね』
「彼女たち?」
『長かった。ようやく元に戻ることが出来る』

 ため息とともに、溢れる白銀の魔力。
 子猫が、大きくなって、白銀の毛並みをした、金眼の獅子が現れる。

「シスト? シストなの?」
『僕が子猫だなんて、誰が言った?』

 にゃって、鳴いていたくせに。

「……聖獣様だったの?」
『愛しい僕の聖女がいないから、今はもう、ただのシストだ』

 その姿は、初代聖女の隣に描かれる、聖獣にそっくりだ。
 けれど、その白い獅子は、初代聖女が、魔神を封印した時に、ともに命を落としたとされている。

 封印の箱には、意思がある。
 幾多の聖女とともに戦い、幾多の聖女に自由を与えた、気まぐれな存在。

『僕はね。君たち聖女に、死んでほしくないんだ。だから、時に恋人との逃避行を手伝うし、時に遠くで幸せに暮らすのを支援する。でもね、聖女の役目を果たすというなら、いつだって、命をかけて力を与えてきたつもり。残念ながら、生き残る可能性は、低いけど』

 その時、ミルさんが、私を庇うようにシストの前に立った。