「――――封印の箱、やはり本物の聖女なのだな。まあ、そんな箱、魔人の存在がなければ、何の役にも立たないが」
プレゼントボックスは、封印の箱というらしい。
神様は、答えてくれないけれど、なぜか時々その箱が、私に話しかけてくるようになった。
『僕はシスト。理沙よろしくね?』
シストは、箱の形をしているけれど、唯一私の名前を呼んでくれる存在だ。
私は、心を許して、何でもシストに相談するようになっていった。
そんなある日、魔獣が大量発生したという知らせが、王宮に届けられた。
聖女の役目は、祈るだけではない。
この国の平和のために、その力を捧げるのが、役目なのだと、ある日突然、旅立ちを強要された。
「――――聖女というより、勇者よね」
それでも、きちんとした装備が与えられて、資金も用意されたのだから、ヒノキの棒だけ与えられるよりも、ましなのかもしれない。
そして、出立の準備を整える私の後ろには、もちろんレナルド様が当然のように付き従う。
「レナルド様は、侯爵家のお方なのですよね?」
「その通りです」
「――――私なんかに、ついてくる必要ないのでは?」
「守護騎士が、聖女様のおそばを離れるはずもないでしょう」
最近、私に笑いかけてくるようになったレナルド様。彼は、笑うと急に幼く見える。
彼は、私とほとんど年齢が違わない18歳だというから、驚いてしまった。
何度も死地から生還を果たすような経験をしているというレナルド様は、私みたいな甘い考えをしていないのだろう。ずっと、大人に見える。
「どうして守護騎士になったんですか。断ることができたって、皆さん言っていましたよ」
皆さんというか、王宮でレナルド様を慕っているらしい、一部の令嬢たちに囲まれた時に聞かされた。
たしかに、聖女の守護騎士の順番に当たっていたものの、ディストリア侯爵家の力なら、ほかの貴族に代理を頼むという選択肢も可能だったらしい。
百年後に召喚される、本当の聖女の守護騎士になるのは、最高の誉れだとしても、私みたいな中継ぎ聖女なんて、レナルド様の価値を落としてしまうのだとも……。


