「戻りたいです。レナルド様の力になりたいから」
『それを、レナルドが望まないのだとしても、聖女に戻りたい?』
「え……?」
レナルド様が、私に聖女でいてほしくないと願っていることには、気がついていた。
『僕は、ナオが彼女の守護騎士と恋に落ちた時も、聖女でいなくて済むように、幸せになれるように手伝った』
「シスト……」
『僕は、僕の聖女のためだけに生きる。それでも、巻き込んでしまった君たちの願いは、必ず叶えるって決めているんだ。……たとえどんな結末を迎えるのだとしてもね』
「私は……」
「リサ!」
部屋に駆け込んで、私たちの会話を中断させたレナルド様は、ひどく顔色が悪い。
まるで、敵性生物でも見るような視線を、シストに向ける。
『おやおや、元守護騎士様は、相変わらずだね。これは、理沙のためなのに』
「リサを巻き込むな。……リサは、俺が守る」
『僕も君みたいな考えだったよ。彼女の本当の願いを知らないまま、ただ守ろうとした。……その結末が、これだ』
今までの会話なんてなかったみたいに、シストは短いあくびをして、ただの子猫のように膝の上で丸くなった。


