なぜ、そんな貴重なことを即断即決してしまったのかと、後日レナルド様に聞いてみたけれど、少し口の端を上げただけで「後悔していませんよ? それに、聖女様のはじめての魔法を頂いてしまって、逆に申し訳なかったかもしれませんね」という返事があっただけだった。

 しばらくして、侍女が交代になった。
 侯爵家で働いていたという、リーフという侍女は、私のことをとても大切にしてくれる。
 リーフは数少ない、私の味方でいてくれて、それでいて侯爵家の教育レベルが、本当に高いのだと私を何度も感心させた。

 今日のドレスも、リーフが選んでくれたし、黒髪も重くなり過ぎないように、ハーフアップにまとめてくれているのだった。

 おしゃれをしたところで、聖女は一人で食事を食べる。
 相変わらず、私の斜め後ろには、レナルド様が控えている。

「――――食べている姿を見ていて、おなか空きませんか?」
「ふ、空きませんよ。鍛えていますから」

 鍛えていてもいなくても、空腹になることは、変わりないと思うけど……。
 そう、首をかしげながらも、私は待たせてしまうのは申し訳ないと、急いで食事に手を付ける。

 聖女は、お肉を食べてはいけないと、食卓に上るのは野菜ばかりだった。
 幸いなことに、卵は食べてもいいらしい。
 でも、残念なことに、ぞんざいに扱われていることを示すように、野菜とパン以外が食卓に上ることはない。

「よろしければ、こちらもお召し上がりください。俺のと同じで申し訳ないのですが」

 そんなことを言うレナルド様が、卵料理をなぜか侯爵家から持ってきてくれるから、栄養は何とか取れそうではあった。

 そして、聖女の朝は早い。
 神殿を訪れて、祈りをささげる。
 神様が答えてくれるわけではないけれど、初めて祈りをささげた時に、私の左肩上に、なぜかプレゼントボックスが浮かんだ。