中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。


 後日、リサは本当に申し訳なさそうに、俺に声をかけてきた。

「あの、守護騎士様……」
「レナルドと呼んでもらえませんか?」
「――――レナルド様、あの、守護騎士の誓いは、お互い生涯にただ一人としか結べないって……。あの、後悔していませんか」
「後悔していませんよ? それに、聖女様のはじめての魔法を頂いてしまって、逆に申し訳なかったかもしれませんね」

 そう、たしかに、後悔なんてするはずもない。
 もし聖女の魔法で愛剣に加護が受けられると知られれば、それだけで多くの騎士が守護騎士になりたいと願い出るだろう。

 だが、そんな理由で、守護騎士になったわけではない。
 勘違いされないように、俺の剣が聖剣になった件については、あえて伏せた。
 ただ、守りたくなった。その言葉のほうが、よっぽど理由としてしっくりとくる。

 侯爵家から連れてきたリーフという名の侍女には、誠心誠意仕えるように命令した。
 だが、いつのまにかリーフは、リサに夢中になってしまったようだ。
 真の主はリサだとばかりに、リサの置かれた状況を逐一俺に伝え、改善を願ってくる。

「聖女様は、お肉を食べてはいけないって、王宮では粗末な野菜料理しか出ないんです!」

 彼女は、今日もリサの置かれた状況に、憤慨していた。

「そうか……。守護騎士として王宮にいることも多い、俺に卵料理の入った食事を届けるよう、執事に伝えておくように。ああ、最近空腹になることが多い。卵料理は多めに、毎回種類を変えてくれ」
「かしこまりました」

 リーフは若くても、侯爵家で厳しい侍女としての教育を受けている。そんな淑女の見本のような彼女が、うれしそうに小走りに去っていった。どれだけ、リサが好きなのだろう。
 男爵家令嬢のリーフは、珍しいことに貴族であっても、異世界から来たという聖女を低く見ることはない。彼女に言われるがまま、俺はリサのドレスやアクセサリーを揃えていった。