守護騎士の誓いだけは、その名を呼ぶことが正式に許されていると、聖女に関する文献には書いてあった。
 一生に一回の、守護騎士と聖女を繋ぐ魔法の効力は強い。
 神の定めた理を、ほんのひと時でも書き換えるほどに。

 多分意味が分からないのだろう、その可愛らしい瞳を瞬いて、リサが俺を見つめる。

「赦しますと、ただ一言」

 そうすれば、守護騎士は俺一人。
 どうしても、リサに受け入れてもらいたかった。

「あの。ゆるします?」

 その瞬間、俺たち二人の足元から桃色の光があふれ出す。
 
 ――――聖女の初めてには、大きな意味がある。

 桃色の光は、俺の剣に吸い込まれていった。
 文献に書かれていた。ある聖女が、初めて使った魔法で、守護騎士の剣は聖剣になったのだと。

 守護騎士になった瞬間、リサを守りたいという気持ちは、より強くなる。
 これは、守護騎士の誓いによるものなのかもしれない。

 それでは、もう一つ、心の奥底に生まれてしまった、ドロドロとして熱い、小さなマグマのようなものは、何なのだろうか。その問いに答えが出るのは、あの日。もう一度、彼女からの初めてを受け取った日に、俺はその気持ちの蓋を開けてしまうのだ。