一緒に戦わせてほしい、そう言おうとした瞬間、抱きしめられる。
 それは、逃れることなんて出来ないほど、強い抱擁。

「一緒に来て、リサ。王都に帰りましょう」
「――――え? でも、私はここで」

 この地が、戦いの舞台になる。
 それは、なぜか私の中で、確実に起こる未来として認識されている。

「来てくれなければ、この周囲一帯を破壊して、俺もこの場所で」
「――――ひぇ?」

 レナルド様らしくない、暗闇の中に鈍く光る尖った鉱石のような言葉。
 そんな言葉が、降ってくるなんて、想像もしていなかった私は、体を硬直させる。

 そんな私を見つめていたレナルド様は、さっきの言葉が聞き間違いだったみたいに、爽やかにほほ笑む。
 その微笑みと、痛いほどに掴まれた手首が、あまりに対極的で、私を混乱させる。

 ――――不意に拘束する力が緩んで、私の手首に落ちてきた口づけは、待ち望んでいたみたいに熱くて、ますます私の思考を鈍らせる。

 レナルド様の、あまりの変化に、私は、再会できたら絶対に伝えようと思っていた「好き」という言葉を伝えることも出来ない。
 それでも、その手を振り払うことなんて、もちろん出来ない。

「行きましょう? 仲間たちも心配しています。周囲の問題は、片づけたから、王都は安全です」

 ――――どうやって?

 聖女ではなくなった私を、王族や神殿は用済みと見做して刺客まで送ってきていたのに。

「……こんな未来が来ることなんて、想定していました。だって、俺はずっと、リサに聖女なんてやめてほしかったんですから。――――ずっと準備していたんですよ?」
「レナルド様、私は」