中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

 それは、小さな違和感だった。
 普段見かけない、弱い魔獣。
 それは、北に近い辺境の村周囲には、いないはずの、色鮮やかな鳥の姿をしていた。

 色は美しく、小さな動物を捕食する鳥。
 とくに、その魔獣が周囲に害をもたらすことはない。
 けれど、だからと言って、楽観視することもできない。

 無言のまま、薄水色の髪と、ラベンダーの瞳をした騎士が、その魔獣を一刀に屠る。
 それは、小さなほころびだった。だが、いないはずの魔獣が、その場所にいる。
 それは、明らかに、これから起こる災厄の始まり。

「――――見つけた。スタンピードが起こるのは、この地ですか」

 この地で、それが起こる理由は、はっきりしている。
 今は、魔女と呼ばれる、元聖女の存在を、その騎士は掴んでいた。
 そして、その近くで過ごす、愛しい存在のことも。
 二人は、魔人と魔獣にとっては、最も優先すべき敵なのだから。

「リサ」

 騎士は、砂埃が舞う、辺境の大地に降り立つ。
 もうすぐこの場所は、戦いの舞台になる。
 そして、騎士は一人、この場所で、愛しい彼女を守る覚悟を固める。

 いつの間にか、その唇には、場の雰囲気にはそぐわない、柔らかい微笑みが浮かんでいた。