『そ、理沙。このままじゃ、二人とも助からない。それは僕も困るんだけど』

 プレゼントボックス、ではなく封印の箱が私に話しかける。

『聖女がこの世界からいなくなるのだとしても、理沙は守護騎士を助けたい?』

 ――助けたいに、決まっている。

 そもそも、私は聖女なんかじゃない。
 この世界に呼び出される数年前まで、ただの女の子だった。
 そう、私は聖女なんかじゃない。ただの理沙だ。

 私は、決意を込めて、どこか緊張感のない声音の、封印の箱、シストを見つめる。

『……いいよ? それなら助けてあげる。その代わり、このあと、すご~く大変だと思うけど、がんばってくれるよね?』

 ぴょこんと、プレゼントの箱の三角形にとがったリボンが、白いフワフワの耳に変わる。後ろ側からしっぽが現れて、箱はあっという間に、空に浮かぶ小さな二足歩行の猫に変わった。

 もう一度、現れた魔法陣は、今度は桃色の光を強めて、私たちを包み込む。
 そのまま、私はぼんやりと、自分の目の前に表示されたステータスの『聖女』という文字が、桃色の光の中で、猫の爪にがりがりと削られて消されていくのを見た。

 私が意識を保っていられたのは、残念ながらそこまでだった。