私は、慌ててカーテンを閉め直す。
今いる部屋は、三階らしい。
目の前には、大きな庭があるけれど、その先にある門の前に、たくさんの人が集まっているのが見えたから。
遠目にも分かるほど、どの人の顔も、険しい。
「あちらは、レナルドに任せておけば良いわ。ところで……」
胸を揺らしながら、ガバリとミルさんが、私のベッドに体を乗り上げてきた。
「み、ミルさん?!」
「これは、一体どうしたことかしら?!」
妙に興奮しているミルさんと、理解の追いつかない私。二人で、ベットの上で見つめ合う。
どういう状況なのだろうか、これ。
でも、よく見るとミルさんの視線は、私ではなく私の少し横に逸れているようだ。
「…………にゃ?」
私の左肩上には、もう封印の箱は浮かんでいない。だって、封印の箱シストは……。
そうやって、毛繕いしている姿は、首に赤いリボンを巻いた、ただの白い子猫みたいだけれど。
「かわいいわぁ!」
ミルさんが、猫好きだなんて、知らなかった。
シストを愛でるミルさん。
その時、勢いよく扉が開いた。
「リサ!」
弾丸のように、飛び込んできた人は、確かにレナルド様だ。でも、何だろう、この違和感。
そろりとミルさんは、起き上がり、名残惜しげにシストを一瞥すると、なぜかレナルド様に「ちゃんと伝えなさいよ?」と、言って部屋を出ていく。
「リサ……。目が覚めて、よかったです」
ぎゅっと、レナルド様に抱きしめられる。信じられないくらい、良い香りがする。
急に近づいた距離感。私の頬は、誰が見ても分かるくらい、紅潮しているに違いない。


