「くぅ……?!」
私の魔法の隙間を縫って、悪意が入り込もうとしてくる。
寒い、怖い、でも……。
「レナルドさま……」
「やめてくれ! このままでは、リサまで」
久しぶりに呼ばれた、懐かしいその名前。
きっと、あの時すぐに、私に守護騎士の誓いを立ててくれたのは、その儀式だけは名前を呼ぶことが許されるからだったに違いない。
神につけられた聖女の名前を呼ぶことは、この国では禁忌とされているから。
『そ、理沙。このままじゃ、二人とも助からない。それは僕も困るんだけど』
プレゼントボックス、ではなく封印の箱が私に話しかける。
きっと、シストは魔人と私たちが出会うことを知っていたのだろう。
無条件に信じていた。それでも、今、縋ることができるのはシストの存在だけだ。
『聖女がこの世界からいなくなるのだとしても、理沙は守護騎士を助けたい?』
――――助けたいに、決まってる。
そもそも、私は聖女なんかじゃない。
つい数年前まで、ただの女の子だった。
そう、私は聖女なんかじゃない。ただの理沙だ。