クルクルと私の斜め上で回る箱は、何事もなかったかのように、再びリボン付きのプレゼントの箱みたいな姿を取り戻した。
ドシャリと、重いものが地面に崩れ落ちる音がする。
レナルド様の鎧が、ガチャリと音を立てる。
片膝をついたレナルド様の魔力を全て食い尽くそうと、ネバついたような感触の呪いが、淡い緑の光を放つ。
「……ご無事ですか。聖女様」
「レナルド様……。はい、無事ですよ」
こんな時まで、私に笑いかけるなんて……。心が粉々に割れてしまいそうだ。
泣きながら私は、守護騎士レナルド様に縋り付いた。
レナルド様がいなければ、この世界を守ろうと思うことができない。
レナルド様だけが、いつも正面から私を守ってくれて、一緒にいる間だけ、たった一人呼び出された、この世界での孤独が薄まったのだから。
「――――すぐに、王都に戻って、魔術師と剣聖に連絡を」
「その前にすることがあります」
「聖女様……。時間がないから」
そう、レナルド様には時間がない。
私は、覚悟を決める。
レナルド様にとっては、不本意に違いないけれど、この力を使うのは、たぶん私の人生で今しかないように思えた。
聖女の初めてには、大きな意味がある。
初めての魔法。
初めての戦い。
初めての祈り。
すべてが、二回目以降のそれと違い、神聖な意味を持つのだ。


