だって、私は、中継ぎの聖女のはずだから。
目の前に、この存在が現れるのは、100年後のはずだったから。
「予言のうそつき」
つぶやいた私と、目の前の存在に即座に斬りかかる選択をしたレナルド様。
その体を守るために、私は魔法障壁をもう一度……。
「…………え?」
瞬きするほどの時間で、私の目の前には魔人がいた。
「――――たしかに、予言は合っているだろう。俺の魔力が、完全に回復するまで、あと100年ある。だが、完全でなくても、芽を摘むくらいは容易だ」
「聖女様!」
「100年後に、聖女は現れない。もう、あちらの世界との扉は、閉じておいた」
何を言っているのだろう……。
だって、私は中継ぎで、だから魔人が世界を壊してしまうのは、まだ100年先で……。
――――どうして、100年魔人が待っていてくれるって思ったのだろう。
そんな都合のいい話、この世界にあるはずないって、不条理に召喚された私は、良く知っていたはずなのに。
「だが、それでも、100年後の未来では…………聖女と守護騎士の」
笑った魔人の口の中に、真っ赤な舌が見える。
私だったら、絶対こんな敵キャラが出てくるゲーム買わない。
「聖女……。おそらく、今の完全に回復していない魔力では、殺すことはできまい。だから、せめて永遠にその名を失えばいい」


