聖女召喚されてから、2年の月日が過ぎた。
 その間も、魔獣討伐に出かけたり、流行病の調査と治癒に出かけたりと、忙しく過ごしていた。

 むしろ、忙しく遠征をしていれば、王宮にいなくて済むことに気が付いてからは、精力的に働いている。

 そして、今日は王都から馬で二日ほどの距離の村に起こった流行病の調査に来ている。流行病の調査のため、私とレナルド様だけで村を訪れた。
 パーティーメンバーは、王都で待機している。

「レナルド様のこと、付き合わせてしまって申し訳ないのですが……」
「王宮も、貴族社会も、息が詰まります。聖女様の守護騎士になれたこと、人生最大の幸運だったと思っています」

 レナルド様は、時々大げさだと思う。でも、嫌われてはいないように思う。まあ、これだけ素敵で完璧な騎士様だ。勘違いしないようにしよう。

 改めて、レナルド様を観察してみる。薄水色の髪の毛は、遠征続きでもツヤを失うことがないし、ラベンダー色の瞳は、見つめられるとドキッとするほど美しい。

「……レナルド様なら、騎士団でいくらでも出世できたのに」

 それに婚約だって、たぶん私のせいで、出来ていない。

 ポツリとつぶやいてしまった言葉は、私の本心だ。申し訳ない気持ちで、いっぱいになる。
 でも、レナルド様がいなくなってしまったら、この世界で私は途方に暮れてしまうに違いない。

 そんなことを言ってしまってから、失言だったと気がついた。なぜか、レナルド様が、とても悲しそうな顔をしたから。

 左肩の上で、くるくる回っている封印の箱、シストが『今のは、レナルドが気の毒すぎる……』と言った。確かに、こんなにも付き合わせておいて、配慮がない言葉だった。

「あっ、あの! ごめんなさい! 私、レナルド様に頼ってばかりで、レナルド様が、いてくれないと全然ダメで!」
「……俺がいないと、聖女様はダメなんですか?」
「っ……もちろんです。いないと、たぶん途方に暮れてしまうから。だから」