中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。


「相変わらず、素晴らしいわね」
「あ、便利ですよね?」
「そうじゃないの。魔獣は、同じ場所に繰り返し発生するけれど、これだけ聖域化していたら、この場所にはもうきっと、湧かないわ」

 確かに、聖域化は言い過ぎにしても、この場所はなんだか爽やかだ。魔獣が湧かなければ、周囲の村の人たちも、助かるに違いない。

「……良いことですね」
「そう? 魔獣が湧かなければ、聖女様はますます……」

 ミルさんは、言葉を濁した。仲間たちは、私をいつも気遣ってくれる。
 まあ、確かにもっと魔獣が現れれば、聖女としての待遇は、良くなるのかもしれない。
 でも、聖女なんて必要ない世界の方が、ずっと良い。

「平民たちの間では、聖女人気が鰻上り。いざとなれば、逃げれば良い。さ、魔核を売って、美味い飯でも食いに行こう」

 ビアエルさんの、言う通りだ。
 たぶん、ビアエルさんは、早くお酒が飲みたいだけだろうけど。

 本当は、真っ直ぐ王宮に帰って、報告をあげなければいけないけれど、一働きした後は、美味しいものを食べたって、バチは当たらないだろう。

 チラリとレナルド様を見れば、「聖女様の御心のままに」と返事が返ってくる。

「そんな大事ですか? そういえば、レナルド様と、ロイド様は、貴族様なのに普通に大衆食堂にもついていらっしゃいますよね?」
「……聖女様の行かれる場所なら、どこにだってついていきます」

 レナルド様は、職務に忠実すぎると思う。
 でも、一緒に食事ができるのは嬉しい。
 王宮の中では、私の食事を斜め後ろで控えて見ているだけのレナルド様は、魔獣討伐の間だけは、一緒に食事をしてくれるから。

「そんな言い方では、聖女様には、伝わらないと思うわ」
「……事実を述べただけですよ」
「ジレジレしているの、見てる分には、楽しいけどね」

 二人は、良くわからない会話をしているし、ビアエルさんは、ひたすら店内の樽を空にしている。
 意外にもロイド様は、お酒は好きなようだ。黙ったまま、黙々と飲んでいる。

 私は、楽しいと思える時間に感謝しつつ、今日も用意された、卵料理と野菜を口に運ぶのだった。